プロローグ

 ――これはね。
 あたしの最後の、マスターのお話。
 あたし達のいるこの世界には、古くからの言い伝えがあるの。何でも、世界には古代武器ロスト・ウェポンと呼ばれる、遠い昔に栄えた古代文明の遺産が七つ存在していて、その武器を手にした者は神の力を望むだけ、手にする事が出来ると言うわ。
 ……あ。
 有りがちな話だって、思ったでしょう?
 ええ、きっとね、何処にでもあるような有り触れたお話なのかもしれない。確かに、そうなのかもしれないの。
 でも。
 でもね。
 あたしにとっては、特別なお話なの。
 ……だって。
 だってこれが、あたしにとっての……。


 あたしの横で、かちゃかちゃと鍵をいじっている青年。
 彼が、今のあたしのマスター。
 緑色のぼさぼさの髪に、鼻の上にちょこんと乗っかっている丸メガネ。どちらかと言ったら、大人しそうな顔立ち。ひょろひょろの小柄な身体に黒いローブを着込んで、胸には十字架を象ったペンダント。全身黒尽くめだから、色と言ったら髪の色とペンダントの金色ぐらいのモノなのよ。ここら辺、もうちょっと何とかならないかなっていつも思うわ。
 正直、お世辞にも頼り甲斐がありそうには見えない、そういうニンゲンなの。ノエル=プラムシェイプって言うヒトは。歴代のマスターを思い出してみても、ノエル程頼り無さそうに見えたマスターはそうそう思い浮ばなかったぐらい。
 ま、見た目、の話ではあるんだけど。
 そんな彼でも、あたしは嫌いじゃないわ。
 だって、退屈だけは、しないんですもの。
 ――それって。
 とっても、ステキな事だと思わない?

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